柴犬ポチがやって来た日
ポチが我が家に来たのは1996年、出会ったのは東京のペットショップ。その日の物語なり・・
ポチが我が家にやって来たのは1996年9月初旬のこと。
その少し前から犬の雑誌や飼育本を読み漁り、柴犬や飼育に関する知識をせっせと仕入れていた。
ブリーダーに何件も問い合わせをしたり、近くのペットショップを回ったりした。
予約をして3ヶ月待つ・・どこもそんな感じだったけれど、今すぐにでも欲しいのに何ヶ月も待てない。
何でも欲しいと思ったら、すぐ手に入れないと気がすまない性格なのだ。
「よし、明日、東京に行ってこよう」 そう決心した。
犬雑誌を見て都内のあるペットショップに電話をかけたところ、豆柴の赤ちゃんが3匹いるという。
「かわいいですよ。見にきてくださいね」そう言われ、是非見に行きたくなってしまったのだ。
明日は休みだ! 気に入れば連れて帰るつもりで、気分うきうき。

(←当時の犬雑誌の広告の一部)
さて次の日、静岡から新幹線にて東京へ・・・
家を出てから約2時間後のお昼過ぎ、都内の私鉄沿線にあるそのペットショップはすぐに見つけられた。
がしかし、すぐ眼前に目指ざすその店があるというのに入ることが出来ない。
ためらっていたのだ。ここまで来ておきながら迷っている自分が・・・
それは、本当に犬を飼ってもやっていけるのか?という基本的な疑問からくる不安なのだった。
とりあえず、店に入って見るだけでもと思ったけれど、カワイイ子犬を目の前にして冷静に考えられるはずもない。
僕は気ままな一人暮らし。
だから家族に世話の分担をしてもらうなど不可能だし、昼間仕事に出ている間、犬は一人ぼっちになる。
犬がいることによって自分の行動が制限され、早く家に帰らなければならないだろうし、気ままに自由に旅行も出来なくなるのだ。
もちろん、自分なりによく考え「飼える」と結論を出したつもりだったけれど、やはり迷いが出てしまったのだ。
衝動買いした「物」が気に入らなくなったら捨ててしまえばいい。けれど、「命あるもの」は捨てられない、気楽な決断は出来ない。
しばらく辺りをうろつきながら考えた。
9月とはいえ、まだ日差しは強い。汗をかきながら、飼う、飼わないの究極の選択に迫られ?川越海街道沿いをぶらぶら歩く。
少しお腹も空いたのでロイヤルホスト(ジョナサンだったかも?)で少し休む事にした。
1時間ほどそこでゆっくりと過ごして出した結論は、「やっぱり、飼うぞー!」だった。
今更ここまできて引き下がれるか!って思った。
子供の頃からの夢「犬との暮らし」に手が届くというのに、何故、躊躇する必要があるのか、
先のことばかり心配していても仕方ないじゃないか、、と。
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お世辞にもきれいとは言えないその店はとても狭く雑然としている。
なぜか香港の裏通りにある汚い漢方薬や骨董の店を思い出してしまった。
店に入ってすぐに、ケージの中にすやすやと寄り添うようにして眠る3匹の柴の子犬たちが目に入いる。
他にもいくつかの犬種や猫たちがいたけれど、そんなのは全く目に入らない。目はもうこの子犬達にクギずけ。
「柴をお探しですか?」店主さんが声をかける。
「ええ、そうです」僕はうなづく。
この子たちは兄弟だった。本当は4匹いたけれど1匹は売れてしまったという。
主人はよく真近で見れるようにと、床においたサークルの中に彼らを1匹づつ手に取り、そっと入れる。
眠りから覚めた3匹は、どの子も活発に動き回る。
お互いにじゃれあい噛み付き合い、もう見ているだけで癒されてしまう。
まさに動くおもちゃ・・・
店主さんの柴犬談義を聞きながら、僕は3匹を代わる代わる手にとり抱きかかえる。
まるで生卵を扱うように丁寧に・・落としたら割れちゃう・・そんな感じ。
前から飼うならメスと決めていた。いろいろ理由はあるけれど・・
3匹のうち1匹はオス。だから候補は残りの2匹、うち1匹はゴマに近い感じで、鼻黒のマスクで個性的。
もう1匹は完全に赤だった。
僕の希望を言うと、店主さんは候補外のオスを元のケージに戻した。
サークルの中で無邪気に遊ぶメスの2匹・・
しばらく、この2匹と僕はじゃれあいながら色々と考えた。
どちらかの1匹を・・? いやまだ、決められない。他の店を回らなくていいのか・・?
値段は高すぎやしないか・・? 今決めずに、もっと待った方がいいのでは・・? 頭の中をたくさんの思いが駆け巡った。
だけれども、でも結局決めた。
赤の1匹をウチに迎え入れることにした。
それが今のポチなのだ。
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えっ、値段はいくらかって?? うーん、高かった、僕にしてみれば。
でも、今となってはどうでもいいことだ。
何しろ金額に換算できないほどのものをポチからもらってるから。
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小さなダンボール箱に入れられた子犬を大事に脇にかかえ帰路につく。
1円玉ほどの空気穴から鼻先を出しさかんに、クウクウ鳴く。
彼女にとって母犬との別れはそれほど辛くはなかっただろう、兄弟達と一緒だったから。
でも、これからはあの兄弟達とも、もう生涯会うことは出来ない。それを思うと少し心が痛んだ。
それにちゃんと育てられるだろうか?しつけられるだろうか?・・あの店に入る前の不安とは違ったそんな不安もよぎる。
でも、迎え入れる以上、この子の人生、いや犬生のすべての責任を持つのみ。それしかないのだ。
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とにかく家に着き、さっそく、すでに昨日買っておいたゲージにこの子を入れる。
ペットシーツの上でこの子はすぐにおしっこをした。
飼育本に書いてあった。子犬は新しい家に来たらすぐに、放尿する・・と。
最初の一歩は成功したぞ!っと嬉しくなったのを覚えている。
ポチという名前に間もなく決まり、なにはともあれ柴犬ポチとの波乱万丈?の日々が始まったのであった。

写真はこの日の帰りのJR切符、日付は平成8年9月7日となっている。
ポチの誕生日は平成8年7月12日だけれど、それよりこの9月7日の出会った日の方が大事な記念日だと思える。
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